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動物看護師はやめとけ!と言われる5つの理由と11の魅力あるやりがい

動物が好きだから、動物のために働きたいから、そんな思いで動物看護師を目指す人は少なくありませんが、実際に働いてみると、想像以上に厳しい現実に直面することもあるようです。

動物看護師はやめとけというネットでの声を聞くその一方で、困難を乗り越えて、やりがいを感じながら働き続ける動物看護師も大勢います。

動物看護師という職業の課題と魅力の両面をお伝えしますので、アナタが動物看護師を目指しているのなら、あるいはすでに働いているのなら、自分の将来について深く考えるきっかけにしてください。

動物看護師はやめとけと言われる5つの理由

動物看護師という職業には、確かに厳しい面がありますので、動物看護師はやめとけと言われる本質的な理由についてお伝えしていきたいと思います。

1.低賃金の現実:動物看護師の給与事情

動物看護師の給与水準は、残念ながら決して高いとは言えず、人間の看護師と比較しても、かなり低い水準にあることが多いのが現状で、新卒の動物看護師の平均年収は、東京で300万円前後と言われ、地方ですとそれよりさらに低い250万円から280万円くらいになっていて、経験を積んでも大幅な昇給は期待できないことが多いのです。

参考:indeed 動物看護師の年収

この背景には、動物病院の経営事情があり、人間の病院と違い、動物病院には公的な医療保険制度がないため、診療費を抑えながら経営を維持しなければならず、結果として人件費を抑えざるを得ない状況があります。

資格制度の問題もあり、動物看護師の国家資格制度は、愛玩動物看護師法が令和1年(2019年)の衆議院で可決され、令和4年(2022年)に農林水産省が施行してようやく令和5年(2023年)に国家資格試験が始まったばかりで、社会的な認知度はまだ低く、そのため専門性に見合った待遇を得られにくいという現実があります。

参考:農林水産省 愛玩動物看護師

2.体力勝負:休みなく続く過酷な労働環境

動物看護師の仕事は、体力的にもかなりハードで、動物を抱きかかえたり、保定したりする作業は、想像以上に体力を使うため、大型犬などの場合、かなりの重労働になることもあります。

勤務時間も長くなりがちで、動物病院は夜間や休日も開院していることが多く、シフト制での勤務が一般的ですが、緊急の症例が入れば勤務時間が延びることも珍しくないので休憩時間も十分に取れないことが多いのも現実で、動物の世話や診療補助、掃除など、やるべき仕事が途切れないため、休憩時間を十分に確保できず、心身ともに疲労が蓄積しやすい環境になってしまっています。

3.感情労働のストレス:飼い主との難しいコミュニケーション

動物看護師の仕事は、動物だけでなく、飼い主とのコミュニケーションも重要ですが、このコミュニケーションが時として大きなストレス源となることがあります。

飼い主の中には、ペットへの過度の愛情から、無理な要求をしてくる人もおり、ペットの状態が思わしくない場合の説明など、デリケートな話題を扱うため、時には、飼い主の怒りや悲しみの矛先が、動物看護師に向けられることもあるのです。

このような感情労働は、精神的な負担が大きく、常に冷静さと共感性を保ちながら対応することが求められるため、高度なコミュニケーションスキルと強いメンタルが必要になります。

4.キャリアパスの限界:昇進の機会が少ない現状

動物看護師として働き始めても、キャリアアップの道筋が見えにくいのが現状で、多くの動物病院では、組織の規模が小さいため、管理職などへの昇進の機会が限られています。

スキルアップのための研修や教育制度が充実していない病院もあり、自己啓発に励んでも、それが待遇の向上に直結しにくい環境にあるのです。

獣医師になるためには、改めて大学に入り直す必要があり、これは時間的にも金銭的にもハードルが高く、現実的な選択肢とは言えない場合が多いです。

5.社会的認知度の低さ:専門性が評価されにくい職業

動物看護師の仕事は、専門的な知識と技術を要する職業ですが、その専門性が社会的に十分に認知されているとは言い難い状況で、多くの人は動物看護師を単なる「動物のお世話係」程度に考えている人が多いのですが、実際には動物の健康管理や診療補助、飼い主への指導など、多岐にわたる重要な役割を担っているのがほとんど知られていないのです。

この認知度の低さは、待遇面にも影響を与えており、専門性が正当に評価されないため、給与や労働条件の改善につながりにくい現状があるわけなのです。

それでも続ける!動物看護師の11のやりがいについて

動物看護師の仕事の厳しい面をご紹介してきましたが、多くの動物看護師は、これらの困難を乗り越えて仕事を続けており、それは、動物看護師のならではのやりがいがあるからで、ここからは、動物看護師の魅力的な11の側面をご紹介したいと思います。

1.命を救う喜び:動物の健康を支える使命感

動物看護師の仕事の最大の魅力は、動物の命と健康を守ることができる点で、病気やケガで苦しんでいた動物が、治療を経て元気になっていく姿を間近で見られることは、何物にも代えがたい喜びです。

重症の動物が一命を取り留めた時、長期入院していた動物が無事に退院できた時、そんな瞬間に立ち会えることは、この仕事の大きなやりがいとなり、自分の仕事が直接的に命を救うことにつながっているという実感は、他の職業ではなかなか味わえないものです。

日々の健康管理や予防医療を通じて、動物たちの健康を支えていくことも重要な役割で、適切なケアやアドバイスによって、動物たちがより健康で幸せな生活を送れるようサポートできることは、大きな達成感につながります。

2.飼い主との絆:感動と感謝に包まれる瞬間

動物看護師の仕事は、動物だけでなく、飼い主とも深く関わり、大切な家族である動物の健康を一緒に支えていく中で、飼い主との間に強い信頼関係が築かれていきます。

動物の状態が改善した時の飼い主の喜びの表情や、感謝の言葉を直接聞けることは、この仕事の大きな報酬の一つで、時には、長期の治療を乗り越えた動物と飼い主との再会の瞬間に立ち会うこともあり、そんな感動的な場面に居合わせられることは、何物にも代えがたい経験となります。

また、飼い主教育を通じて、より良いペットライフをサポートできることも魅力で、適切な飼育方法や健康管理のアドバイスをして、動物と飼い主の生活の質を向上させることができるのです。

3.専門知識の追求:常に学び続けられる環境

動物医療の世界は日々進化を続けており、新しい治療法や診断技術が次々と開発され、動物の健康管理に関する知見も日々更新されていて、動物看護師として働くことは、こうした最新の知識や技術を常に学び続けられる環境にいられることを意味します。

動物医療に関する新しい医療機器の使用方法を学んだり、最新の治療法について勉強したりと、学ぶ機会は尽きませんし、様々な動物の症例に触れることで、教科書だけでは得られない実践的な知識や経験を積むことができます

この継続的な学習と成長の機会は、知的好奇心の強い人にとっては大きな魅力となり、動物医療の知識や技術が日々向上していくことを実感できるのは、大きなやりがいにつながると思います。

4.チーム医療の一員:獣医師との協働がもたらす充実感

動物病院では、獣医師を中心としたチーム医療が行われ、動物看護師はその重要な一員として、獣医師と密接に連携しながら仕事を進めていきます。

診療の補助や術後管理、検査データの収集など、獣医師の診療をサポートする役割は多岐にわたるため、時には、獣医師と意見を交換しながら最適な治療方針を検討することもあり、このように専門職として獣医師と協働できることは、大きなやりがいとなります。

また、チームの一員として重要な役割を果たすことで、自己の存在価値を強く感じられ、自分の仕事が直接的に診療に貢献していることを実感できるのは、大きな喜びにつながるはずです。

5.動物福祉への貢献:社会的意義のある仕事

動物看護師の仕事は、個々の動物の健康を守るだけでなく、より広い意味で動物福祉の向上に貢献しており、適切な飼育方法の普及や、動物虐待の早期発見と対応、不妊去勢手術の推進など、動物たちの幸せを守るための活動に携わることができます。

災害時の動物救護活動や、保護された動物のケアなど、社会貢献度の高い活動に参加する機会も増えていて、こうした活動を通じて、社会的に意義のある仕事をしているという実感を得られることは、大きな誇りとなるわけなのです。

そして飼い主教育を通じて、人と動物のより良い関係づくりに貢献できることもこの仕事の魅力の一つで、動物との適切な接し方や、責任ある飼育の重要性を伝えることで、社会全体の動物への理解を深める役割を果たすことができるのです。

6.多様な動物との出会い:様々な種類の動物に接する機会

動物看護師の仕事の魅力の一つは、多種多様な動物たちと接する機会が豊富なことで、犬や猫はもちろん、ウサギやハムスター、鳥類、爬虫類など、様々な種類のペットの診療に携わることができます。

それぞれの動物には固有の特性や習性があり、その違いを学び、理解を深めていくことは非常に興味深い経験で、珍しい動物や希少種と出会うこともあり、こうした多様な動物との関わりは、動物看護師としての知識と経験を豊かにし、仕事の幅を広げてくれると思います。

様々な動物と接することで、アナタ自身の動物に対する理解と愛情も深まっていき、それぞれの動物の個性や魅力を発見し、より多くの動物たちを愛おしく思えるようになる、そんな心の成長も、この仕事の大きな魅力ではないかと思うのです。

7.技術の向上:手に職をつける喜び

動物看護師の仕事には、多くの専門的な技術が必要とされ、動物への採血や点滴の補助、手術の準備と介助、各種検査の実施など、様々な動物医療の行為に関わる技術を習得しなければならず、これらの技術を磨き向上させていく過程は、大きな達成感と自信につながるはずです。

最初は不安や戸惑いもあるかもしれませんが、経験を重ねるにつれて、確実に技術が身についていくことを実感できますから、困難だった処置がスムーズにできるようになった時、自分の成長を強く感じられると思います。

こうして身につけた技術は、動物医療の現場で直接役立つだけでなく、アナタの人生における大きな財産となり、自分の技術で動物たちを助けられるという自信は、何物にも代えがたい喜びをもたらすはずです。

8.予防医療の実践:病気を未然に防ぐ喜び

動物看護師の重要な役割の一つに、予防医療の実践があるのですが、定期健康診断やワクチン接種、栄養指導など、病気を未然に防ぐための活動に携わることができ、動物たちの健康を長期的に支える非常に意義深い仕事なんです。

予防医療を通じて、多くの動物たちが健康で幸せな生活を送れるようサポートできることはモチベーションアップにもつながると思います。

また飼い主さんに適切なケア方法を指導し、その結果として動物の健康状態が改善していく様子を見られることも、やりがいのある経験となるはずです。

動物が病気になってから治療するのではなく、病気にならないようにサポートする、この予防の視点は、動物医療において非常に重要で、アナタの知識と技術が、多くの動物たちの健康な人生をサポートしていく、そんな実感が得られることも、この仕事の大きな魅力と言えます。

9.動物行動学の実践:動物の心理を理解する面白さ

動物看護師の仕事には、動物行動学の知識を活かす場面が多くあり、動物たちの行動や表情から、彼らの気持ちや体調を読み取る能力は、診療をスムーズに進める上で非常に重要です。

この能力を磨いていくことで、言葉を持たない動物たちとのコミュニケーションがより深まっていき、なぜその行動をとるのか、何を訴えようとしているのか、そんな動物たちの心理を理解していく過程は、非常に興味深く、知的好奇心を刺激してくれるはずです。

この知識は診療だけでなく、問題行動の改善や適切な飼育方法のアドバイスにも活かされ、動物と飼い主さんの関係をより良いものにしていく手助けができるようになっていきます。

10.チーム医療の中心的存在:調整役としての重要性

動物病院では、獣医師、動物看護師、受付スタッフなど、様々な職種のスタッフが協力して診療にあたるのですが、その中で動物看護師はチーム医療の要となる重要な存在で、診療の補助はもちろん獣医師と飼い主さんの間の橋渡し役、他のスタッフとの連携調整など、多岐にわたる役割を担い、この調整役としての仕事は、チーム全体のスムーズな連携を支え、より良い医療サービスの提供につながります。

チームの中心的存在として活躍することで、自分の仕事が直接的に診療全体の質の向上に貢献していることを実感できると思うのです。

11.生涯学習の機会:常に新しい知識を得られる環境

動物医療の世界は日々進化を続けており、新しい治療法や診断技術、医療機器などが次々と登場しています。

動物看護の分野でも常に新しい知見が生まれており、動物看護師として働くことは、このような最新の情報に触れ、学び続けられるお仕事なのです。

セミナーや研修会への参加、専門書の学習、先輩看護師からの指導など、学びの機会は多くありますから、やる気があればスキルアップすることは常にできると思います。

日々の診療の中でも、新しい動物の症例や珍しい疾患に出会うことは、実践的な知識を積み重ねていくことにつながり、常に新しいことを学び、自分自身が成長し続けていることを実感できるお仕事だと思います。

動物看護師には課題も存在する職業ですが、多くの魅力的な側面がある一方で、これらの魅力を感じられるのであれば、十分にやりがいのある仕事なので、自分の価値観や興味と照らし合わせて、じっくりと考えてみてください。

まとめ:動物看護師は挑戦する価値のある職業

動物看護師という職業の課題と魅力の両面をご紹介してきましたが、低賃金や過酷な労働環境、キャリアパスの限界など、厳しい現実があることは否定できませんし「動物看護師はやめとけ」と言われる理由も、決して的外れなものではありません。

しかし一方で、動物愛護の観点からの命を救う喜び、飼い主との絆、専門知識の追求、チーム医療の一員としての充実感、そして動物福祉への貢献など、他の職業では味わいにくい大きなやりがいがあることも事実ですので、これらの魅力に惹かれ、困難を乗り越えて働き続ける動物看護師も多いのです。

動物看護師という職業を選ぶかどうかは、アナタ自身の価値観や人生の優先順位によって決まるので、金銭的な報酬や安定したキャリアパスを重視するなら、確かに他の選択肢を考える必要があるかもしれませんが、動物への深い愛情があり、その健康と幸せのために働くことに大きな喜びを感じられるなら、動物看護師は十分に挑戦する価値のある職業だといえると思います。

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